待宵

待つ宵に更けゆく鐘の音聞けば
あかね別れの鳥はものかは

 

 

夜の別れと比べれば全ての朝は耐えられる

 

あなたの繊細な美しさをまぶたに残したい
あなたの穏やかな声を耳に残したい
そして全ての感覚を思い起こす糧にしたい…

待つということは
受けとる準備をすること

悲しいからといって必ず涙が頬を伝うとは限らない

 

待つということは
何かを失うことではない
何かを得るための
醸成させる時間

 

簡単に手に入る「もの」は簡単に使えなくなる

欲しい「もの」が自分の奥深く底でわかっているのに
途中で安易なものに手を伸ばす時は
決まって後悔する

しかし動かなければ色んな見方をすることが困難
気づけば囚われの身

動きながら間違えながらひたすら深化し、夜明けを待つ

 

私は我儘な女

いつも悲劇のヒロインを演じている

視野が狭く物事を我欲の傲慢な視点からしか捉えることができていない

答えを焦り、早合点し

中身の伴わず、蓋を開けると空っぽ
そんな仮初めの女

 

そんな私をあなたはなぜ私を愛してくださるのだろうか・・・


あなたと居ると私の世界は全てが色を変える
苦手のものも苦手ではなく美しくさえ感じる
あらゆる違いは大切な糧になる


あなたのぬくもりが日を追うごとに思い出せない
あなたの繊細な美しさが薄れていく
ただ耳に残る声だけを頼りに

言葉を必要としない距離にまでいきたい
目で会話できる、目で抱擁できる距離に
あなたの心音を感じる距離に
行きたい…

 

あなたが来るまで待つ夜に比べたら

あなたが夜が深まる前に帰るのを見送ることに比べたら

朝あなたが隣にいないことなど比にもならない

 

許される時の限り

そばにいたい…

私とあなたの最終地点

 

人は違いに惹かれる
自分にないものを求める
あなたと私は真逆のよう

天と地
光と闇
男と女

育ちも価値観も年齢も
全てが異なる

ただ一つだけ
あなたと私は奥深く根底で繋がっているように思う

ゆえに最後は分かり合える

何故惹かれるのか
何故この道を歩むのか
私にもあなたにも理由を言葉にはできないだろう

しかし根底の奥深い部分では繋がっている

お互いでなくてはいけない
お互い以外は考えられない
言葉では表すことができない理由

ゆえにどんな違いがあろうとも
最後には
どんな耐えがたきをも耐え
最後には
あなたは私の元へ
私はあなたの元へ

それが最終地点

表現者たち

詩は魂の歌
こころの中の何万という活字の群れにこころをのせる
活字の群れに光を纏わせる

 

詩は書かれた時に誕生するのではない
他者に読まれる事によって本当の意味で詩となる

 

問いに深く交わろうとする時
文字を越えた内なる何かが呼び覚まされる

 

困難に直面した時に人が藁をも掴む思いで探すのは「コトバ」である
「コトバ」には無数の姿がある

 

涙は必ずしも頬を伝うとは限らない
悲しみが極まった時、涙が枯れることがある
悲しみは目に映らない
こころでなら受け止められる

 

黙って寄り添う沈黙の行為も「コトバ」である
大切な人が教えてくれた

 

 

この世界にはどんな華美や華麗といった美も敵わない美が存在する
懸命に生きるものが放つ美

 

それはこころで感じる美しさ

 

懸命に生きるものはこころを開く
こころを開くとは他者に迎合するのではない
自らの非力を受け入れ、露呈しつつ、自分の未知なる豊潤な可能性の開花を
変貌を目撃すること


表現者たちよ
どうかその内なるこころを晒す勇気を
表現者たちよ
どうかその「コトバ」を形に


誰かがあなたの「コトバ」を待っている

 

 

 

コトバには無数の姿がある。画家にとっては色と線が、音楽家には旋律が、彫刻家には形が、宗教家には沈黙が最も雄弁なコトバになる
                    
             ー井筒俊彦

 

あなたが私を見つけた日


私は出逢いの奇跡を綴っていた
そして私を迎えに来て欲しいと望んだ日

 

あなたが私を見つけた日
私があなたを見つけた日でもある
どちらが先に見つけたのだろう…
それが引き合う導きだと疑わない
信じるこころが一緒であれば
どちらが先でも構わない

 

神秘の迷宮で迷子になっていた私に差し出された手を
言葉にすることなどできない感情で掴んだあの日が忘れられない…

 

私がずっとずっと信じ
時に諦めかけていたものをやっと見つけた日

 

私がどれだけ形を変えてもあなたは必ずかつての私の痕跡を見つけ出し
時に待ち
時に迎えに来て下さる


あなたは時の旅人

私も時の旅人


過去へ未来へ今へ
どの時にいても必ず私の元へ帰ってくる旅人

 

私も必ずあなたの元へ帰る旅人

未来と過去が引き合う
過去と未来と今の時を繋ぐ

私はあなたの魂の緒
あなたは私の魂の緒

 

 

私はどこかで失ったら耐えられない存在はつくるまいとしてきていた臆病者

 

もう遅い
愛する人と出逢ってしまったらそんな決意は反転する

知らなかった事になどできない
時がようやく走り出す

 

互いに傷つけ、傷つきながら

共に涙を流しながら

比類なき愛を創造する

 

過去へ未来へ今へ
時の旅をする

旅の途中で
迷子になった時は

 

何度でもここで
何度でも何度でもあなたと出逢い直したい

 

欲望の象徴

そこはかとない欲望を感じる

今までに私のお腹の中に封じ込めていた欲望が動きだす

 

欲望の象徴は胸の痛み

心の痛み

かき回した心を自分で抱える

 

声が聴きたい

時に声を聴くのを遠慮する

衝動的に動いた自分を恥じる

会いたい

のに容易には会えない

あなたを知りたい

のにあなたの一部を知りたくない

 

私の中の何かが孵化してしまう

美しいとは程遠い醜い感情

 

私以外に注がれるあなたに

私は言葉にできない感情を感じる

 

その言葉にできない感情は

あなたを前にすると全て消えてなくなる

黒い感情が

あなたの言葉一つで

全てがバラ色に変わる

 

それでも繰り返す醜い感情

自分を晒す事が失策に感じる

自分がどうしても影に感じてしまう

それを感じるたびに自分の弱さが私を襲う

 

弱さになだれ込むのは楽

その時は

その時だけは醜い感情を忘れられる

逃げれば

目を背ければ

一時だけは楽になる

束の間のひと時

 

なのにまた襲ってくる

ひたすらその繰り返しに嫌になる

欲望の卵を孵らせたくない…

 

感性と想像力には富んでいるが

未熟で独り

独りでいることを選んだ

曖昧でいびつ

曖昧でいることを選んだ

 

唯一味方のはずの想像力が私の中に不安を生む

選んだ道が時に険しく生まれた不安にのみこまれそうになる

 

私は自分の弱さに溺れるのか

自分の弱さや醜さに打ち勝つのか

そんな迷宮の中を歩む

 

ただ愛しているだけなのに…

 

涙目で物事を明確に捉えるのは難しい

全てが霞み

歪んで見える

 

 

 

 

愛と二重奏

雑踏の中独りピアノを弾いている

あなたは私の音に足を止め

しばらく私の音を聴く

私の奏でるどこか寂しげな音にあなたはついピアノに指をおく

始めは高音を控えめに

私の旋律を尊重しながら

徐々にクレッシェンドし、曲と一体化してくるのを感じる

私はすぐにその音に魅了されあなたを愛し始める

あなたの旋律を聴きたくなる

あなたの旋律を聴くために

まるであなたに、気を遣うかのように

自分の音をデクレッシェンドしてゆく

あなたの音が私の中に響く

あなたの旋律が愛おしい

こころを配り、こころと、耳を傾け、呼吸を合わせていく

始めにあなたがしてくれたように…

あなたの旋律と私の旋律

自分の旋律を奏でながら、相手の旋律を活かし合う

譲り合い、支え合い、与え合い、奏で合い、愛で合う

転調は二重奏の、あなたへの愛の深みを生む

ゆえに愛すべきもの

二重奏はあなたを愛すること

愛することは二重奏を奏でるよう

独奏では叶わない音の深み、和音

 

鼓動が合い一体感を生む

 

二重奏を奏で続けたい…

Aubade〜朝の詩〜

もう心がないのに形にしがみつく人を見て私は昔から不思議でしようがなかった。

一体何にしがみついているのだろうか?

中身の何も入っていない「箱」を大切にしている

 

欲しい「もの」はない

「もの」なら自分で買う

欲しい「もの」はない

「もの」では私の心は満たされない

欲しい「もの」はない

私はあなたの心を貰っている

それは私の一番欲しいもの

身体は、あなたを必要とする人へ

欲しい「もの」はない

欲しい「時間」があるだけ

 

あなたが私に

「何かあなたへ贈り物をしたい」と尋ねて下さったら私は

「Aubade〜朝の詩〜が欲しい」と応えるだろう

朝、私の寝顔を側で見つめながらあなた詩を私に贈る

私にはあなたとの朝の時間それ以上欲しいものはない

 

あなたとの「時間」が欲しい

朝も昼も夜も忘れ

食べることも、飲むことにも、寝ることも忘れて

あなたと私以外の全てをどこかに置いて

ただただあなたと過ごす

いつもの永遠のような刹那な時間も大切だが

あなたを堪能して過ごす「時間」が欲しい

 

それが私の欲しいもの

 

身体が側にいない日は

目覚めにあなたの朝の詩を

身体が側にいない日は

心だけは側に・・・

 

それが私の望み